性感染症(STD)
現在、性の病気は性病と呼ばれていますが、性病とは性病予防法により規定された細菌が原因の梅毒、淋菌感染症、軟性下疳、鼠径リンパ肉芽腫の4つの病気のことをいいます。 しかし、これら、細菌の感染は減少していき、性的接触によるウイルスの感染が増加しはじめました。そのため性行為感染症と呼ばれるようになりました。その後、感染症新法が施行されて性病予防法が廃止されました。このときに、細菌による感染の4つの性病とウイルスによる感染の他の病気をまとめて性感染症と総称されるようになり、STD(Sexually Transmitted Disease)と呼ばれるようになりました。
性感染症の症状と特徴
尖圭コンジローマ
男性の場合は、ペニスの亀頭、冠状溝、包皮内外板、陰嚢、女性の場合は、大小陰唇、腟前庭、会陰、腟、子宮腟部にイボができます。また男女とも、肛門内や肛門のまわり、尿道口にもイボができることもあります。イボの形ですが、「乳頭状」、「カリフラワーのような」または「ニワトリのとさかのような」などと表現されることがあります。巨大化することも、たまにあります。痛みやかゆみといった自覚症状はありませんが、炎症をおこしていたりすると痛みやかゆみをともなう場合もあります。しかし、治療しても完全にはウイルスを除去できないので、再発することが多く、何度も治療を受けなければいけないことが多い病気です。 ヒト乳頭腫ウイルス(ヒトパピローマウイルス、HPV)に感染してから、イボが確認できるようになるまでに、3週間から8カ月(平均2.8カ月)かかります。
淋病
感染後数時間から数日で発症する。咽頭の場合は咽頭炎、性器の場合は、尿道炎(男性のみ)、子宮頚管炎(女性のみ)を起こします。男性の場合は排尿時や勃起時などに激しい痛みを伴いますが、女性の場合は自覚症状に乏しいです。放置すると菌が奥へ進み、内臓の炎症、不妊症に発展する場合もあります。
クラミジア感染症
おりものが少し増える程度で、ほとんどが無症状のため気づかないことが多いです 。 尿道炎、子宮頸管炎、新生児肺炎などを起こします。またトラコーマや封入体結膜炎などの眼感染症も起こします。妊婦の場合、まれに流産の原因になったり、出産時の産道感染により新生児が結膜炎や肺炎を起こします。進行すると卵管炎や骨盤内感染症を起こして、不妊の原因にもなります。
性器ヘルペス
性行為などによる接触感染が多くみられますが、母子感染といって出産や乳幼児期の親子間での感染も知られています。性器ヘルペスの症状が現れているときに患者さんが使ったタオルや食器などから感染することもあります。 症状は、初感染と再発の場合で大きく異なります。通常は、初感染の症状が重く、再発が軽くなります。再発を重ねるごとに軽い症状になるといわれます。初感染後は、治療を受けていない自然経過の場合ですが、女性では2~4週間、男性では2~3週間、外性器に症状がみられます。 患部に、ひりひり感、むずがゆさ、灼熱感、痛みなどを感じます。赤いブツブツができ、水ぶくれになり、破れて潰瘍になります。患部に激しい痛みを感じ38度くらいの発熱を伴う場合があります。また、女性の場合は、排尿時に痛みを感じます。
カンジダ膣炎
カンジダ膣炎はカビの一種である真菌類に属する、カンジダ・アルビカンスの感染によって起こる膣炎です。カンジダは、膣内だけでなく、口、気管支、肺などにも寄生しているもので、いつでも病原性を持っているわけではありません。健康体にも寄生していることが多いカンジダですが、いったん病原性を得ると発病して炎症を起こすのです。発病の動機についてはまだ明らかにされていませんが、カンジダ膣炎は、妊婦に多いこと、分娩後は自然になおってしまうこと、糖尿病とかビタミンB2の欠乏した人、栄養不良の人に多い点から、全身の健康状態の変化が、発病の誘因になっていると考えられています。 症状は、外陰部の激しいかゆみで、程度の差はあっても、気が狂いそうなほどのかゆみを訴えてくる場合が多いようです。外陰部は赤くただれて、ひどくなると皮膚が乾燥してカサカサした感じになってくることもあります。おりものは、カッテージチーズのような白くてぼろぼろした感じで、ときには、膣の中にいっぱい詰まっているほどで、膣口や、小陰唇、大陰唇にまでついていることもあります。特別な悪臭はありません。 膣の中でいえば正常人の約10%には検出されるものであると言われています。このカンジダが何らかの原因によって異常に増殖し、おりものがおかしいと自覚され、また外陰部にかゆみを自覚するようになって初めて、カンジダ膣外陰炎という疾患名がつきます。
トリコモナス膣炎
典型的な症状は、外陰部の掻痒感(かゆみ)・灼熱感と特徴的な帯下(おりもの)の増加です。また膣炎が極端な場合には性交時痛や性交不快を訴えたり、血性帯下がみられる場合もあります。膀胱炎などの尿路感染症を合併している場合もあり、排尿時痛などがみられることもあります。 主な感染経路は性行為ですが、性行為以外の感染経路として風呂場や手指などによるものも考えられます。少数ですが性行為の無い幼児・小児の膣トリコモナス症も認められ、この場合には母親がトリコモナス膣炎であることが多くあります。また60才以上の高齢者にも感染が認められることがあります。
外陰膣炎(非特異性膣炎)
外陰膣炎とは外陰部から細菌が入って炎症をおこすもので女児では珍しくありません。小児の膣部は成人に比べ、自浄作用が働かず、一般細菌により炎症が発症しやすい状態にあります。膣入口部から前庭部にかけて赤くなり、またかゆみのためかきむしって、さらに二次的に細菌感染をおこすことがあります。小児期の膣炎はカンジダはあまりなく、ほとんどは普段この部分の近くにいる細菌が感染するものです。カンジダ以外のものを非特異性膣炎といいます。特別な病原菌ではなく、大腸菌とかブドウ球菌、連鎖球菌などによって起こる膣炎です。膣の自浄作用が低下することによって、これらの菌が繁殖してくるのです。 症状は、黄色くて膿のようなおりものが多くなり、いやなにおいがします。おりものが多くなってくると、外陰部もその刺激によって、赤く炎症を起こしてきます。治療は、膣の洗浄と、抗生物質の膣錠を使えば必ず治ります。
毛じらみ症
毛じらみ症(けじらみしょう)は毛じらみ(毛虱)という吸血昆虫による性行為感染症です。成虫の大きさは1mm~2mmで肉眼的には、陰毛の毛根にしがみついている時は「シミ」に、陰毛を移動中には「フケ」にしか見えないため発見が難しい感染症です。成虫は陰毛の毛根にフック状の鈎爪で身体を固定して皮膚から吸血し、卵は陰毛に粘着しています。 潜伏期間は1ヶ月から2ヶ月とされており、まれにプールやベットなどでも感染例があります。陰部や陰毛などが非常にかゆく、毛穴が灰色の斑点状に見える場合があります。その痒さは、男女を問わず人前で陰部をかきむしるほどと云われています。 また、吸血した皮膚より出血して下着に血痕が点々と付着するので、血尿を訴えて罹患者が来院することもあります。
梅毒
感染後約3週間で発症します。治療しない限り体内に残り、最終的には死亡します。現代においては抗生物質の発達により死亡にまで至るケースは稀です。
エイズ
感染後、多くは無症状です。数ヶ月~十数年の潜伏期間を経て、やがて免疫力の低下とともに、発熱、下痢、強い疲労感が起こります。さらに症状が進むと種々の感染症や悪性腫瘍を多発し、2~3年で死に至ります。
B型肝炎
B型肝炎ウイルスは血液中に存在しているので、生理中・肛門性交・器具を使った出血を伴う性行為で感染します。全身に倦怠感・悪心・嘔吐・徐々に黄疸が出現し、進行すると慢性肝炎を引き起こし、肝硬変、さらには肝細胞がんになります。 感染者、患者および保菌者の輸血など、血液を介し感染します。唾液・精液・女性外性器の膣分泌液にも含まれるため、性交渉でも感染します。また、母親が感染者である場合、生まれた乳児も感染します。
C型肝炎
C型肝炎は、A型肝炎やB型肝炎に比べて急性肝炎に進行することは少ないですが、自然治癒することも少なく、高率で慢性肝炎へと移行します。便の中にウイルス存在がでるので、肛門性交やオーラルセックスなどで感染します。B型肝炎同様血液中にも存在しているので、生理中・肛門性交・器具を使った出血を伴う性行為でも感染します。 B型肝炎と比べて症状は軽症ですが、全身に倦怠感・悪心・嘔吐・徐々に黄疸が出現し、進行すると慢性肝炎を引き起こし、肝硬変、さらには肝細胞がんになります。B型肝炎と比べると感染性は低いですが、感染者、患者および保菌者の輸血など、血液を介し感染します。唾液・精液・女性外性器の膣分泌液にも含まれるため、性交渉でも感染します。また、母親が感染者である場合、生まれた乳児も感染します。